メルマガ2022年10月号

目次

メルマガ【2022年10月号】

1 口コミサイトへの投稿が違法であり、投稿者の責任が肯定された例

【判例】

事件名:転職会議(投稿:違法)事件

判決日:東京地判令和3年2月2日

【事案の概要】

本件は,原告が,被告が転職情報サイトに投稿した記事により名誉権を侵害されたと主張して,被告に対し,不法行為に基づき,損害賠償金及びこれに対する不法行為日から支払済みまでの民法(ただし,平成29年法律第44号による改正前の民法)所定の年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める事案

【判旨(「」内は判旨の一部抜粋。下線部、①②などの数字、装飾等は引用者による。)】

・当事者

被告個人
原告株式会社リブセンス

1 問題となった本件記事1(本件記載部分1)

投稿ID:

投稿日時:

投稿内容:退職理由、退職検討理由

 正社員 20代前半(当時)男性 社員クラス プログラマ(オープン系・WEB系)

  

【気になること・改善したほうがいい点】

 退職理由は様々ですが、一般的に考えられる会社の〝普通〟からは逸脱しているように感じました。朝家を出た時、会社に到着した時、家に着いたときに社長に出発報告や帰宅報告やらを送ります。定期的に飲み会が開催されますが、多いときは週に2、3回やります。さすがに飲み代は会社持ちですが、強制参加で、現場配属になっていたら、どんな状況であっても18時に退勤して向かわなければなりません。

 現場によってはやはり残業というのは付き物ですので、何かと理由をつけて飲み会に向かいますが、週に何度もやられると現場に居にくくなります。

 いわゆるワンマン社長ですので、こちらの意見には当然耳を傾けません。また、帰宅中の電話や夜中の電話は当たり前。出るまで着信とメールが止みません。私は他の会社もこんなんではないかと会社を辞めたあともしばらく転職ができませんでした。

IPアドレス:

⑴   社会的評価の低下

下線部の部分は,原告が,従業員に対し,時間や場所をわきまえず,頻回かつ執拗な電話等連絡を日常的に行っているとの事実を摘示するものであり,原告が,従業員に対して,度を越した連絡行為を行うことによって過度に干渉しているとの印象を与えるものであるから,原告の社会的評価を低下させるものといえる。

⑵ 公共の利害に関するもの

 一私企業の内情に関する事実摘示であるから,その内容自体に直ちに公共性が認められるわけではない。もっとも,それが,転職情報サイトを閲覧する不特定多数の者らの転職に当たっての評価・判断の資料となることを考慮すれば,同サイトに情報を記載することには社会的な意義があるといえるから,同サイトに記載された上記摘示事実には公共性があるといえる。

⑶ 公益目的

 本件各記事は,転職情報サイトの求める項目について,実際に原告において稼動していた際の情報を提供したものであり,その記載内容に人身攻撃にわたる部分がないことも考慮すれば,専ら公益を図ることにあったと認められる。

⑷ 適示された事実が真実でないこと・真実と信じるにつき相当な理由がないこと

 被告は同記載部分と同趣旨を陳述する(乙9)。しかしながら,これを裏付ける客観的証拠(着信,メール履歴等)はなく,同陳述を明確に否定する原告従業員の陳述(甲7)があることにも鑑みれば,被告の上記陳述はにわかに採用し難い。その他に上記記載の摘示する事実を真実と認めるに足りる証拠はない。・(中略)・よって,真実性の立証はなく,真実と信ずるにつき相当な理由があったとも認められない。

⑸ 補足:太字かつ斜線部分について

本件記載部分1のうち,「朝家を出た時,会社に到着した時,家に着いたときに社長に出発報告やら帰宅報告やらを送ります。」との記載部分は,読者に対し,会社に対する報告の頻度がやや多いとの印象を与え得るものではあるものの,勤務形態や人事管理体制の如何を問わず会社としておよそあり得ない形で報告を求めているとまでの印象を与えるものではない。また,前後の文脈からして,同記載は,上記のような報告を求められたことについて否定的な意見を表明するものとも読めるが,この程度の表現であれば,意見ないし論評の域を出ない。よって,同記載部分は,原告の社会的評価を低下させる違法なものとはいえず,名誉毀損に当たるとはいえない。

2 問題となった本件記事1(本件記載部分2)

投稿ID:

投稿日時:

投稿内容:退職理由、退職検討理由

 正社員 20代前半(当時)男性 社員クラス プログラマ(オープン系・WEB系)

【気になること・改善したほうがいい点】

 退職理由は様々ですが、一般的に考えられる会社の〝普通〟からは逸脱しているように感じました。朝家を出た時、会社に到着した時、家に着いたときに社長に出発報告や帰宅報告やらを送ります。定期的に飲み会が開催されますが、多いときは週に2、3回やります。さすがに飲み代は会社持ちですが、強制参加で、現場配属になっていたら、どんな状況であっても18時に退勤して向かわなければなりません。

 現場によってはやはり残業というのは付き物ですので、何かと理由をつけて飲み会に向かいますが、週に何度もやられると現場に居にくくなります。

 いわゆるワンマン社長ですので、こちらの意見には当然耳を傾けません。また、帰宅中の電話や夜中の電話は当たり前。出るまで着信とメールが止みません。私は他の会社もこんなんではないかと会社を辞めたあともしばらく転職ができませんでした。

IPアドレス:

⑴ 社会的評価の低下

 本件下線部(記載部分2)は,原告が,従業員に対し,出向先での業務を切り上げてでも飲み会へ参加することを強制しているという事実を摘示するものである。

 そして,飲み会への参加が強制され,それが業務よりも優先されるような会社は,社会的にみて,敬遠される対象であるといえる。よって,同記載は,原告の社会的評価を低下させるものである。

⑵ 公共の利害に関するもの

 一私企業の内情に関する事実摘示であるから,その内容自体に直ちに公共性が認められるわけではない。もっとも,それが,転職情報サイトを閲覧する不特定多数の者らの転職に当たっての評価・判断の資料となることを考慮すれば,同サイトに情報を記載することには社会的な意義があるといえるから,同サイトに記載された上記摘示事実には公共性があるといえる。

⑶ 公益目的

本件各記事は,転職情報サイトの求める項目について,実際に原告において稼動していた際の情報を提供したものであり,その記載内容に人身攻撃にわたる部分がないことも考慮すれば,専ら公益を図ることにあったと認められる。

⑷ 適示された事実が真実でないこと・真実と信じるにつき相当な理由がないこと

通常の読み方からすれば,同記載にいう「強制」については,物理的強制であることはまずあり得ないから,心理的強制をいうものと解される。そのような心理的強制があったといえるかにつき以下検討する。

証拠(甲8ないし11)及び弁論の全趣旨によれば,〔1〕原告が花見,バーベキュー,食事会等のイベントを多めに行っている旨自認していること,〔2〕60名ほどいる社員のほとんどが飲み会に参加しており,欠席者はいるものの,平均して数名程度であること,〔3〕このような飲み会は,参加希望者を募って開催されるのではなく,全員が参加対象であることを前提に,都合がつかない等の事情がある者が欠席するような形態であったことが認められる。

 上記認定事実によれば,原告は,飲み会等,社全体における交流に力を入れており,これに対する従業員の参加率も極めて高かったといえる。このような環境であったことに加え,被告が自身の勤務日以外に開催された飲み会にも参加していたこと(乙9,11,弁論の全趣旨)や被告が新入社員であり遠慮や忖度もあったであろうことも考慮すれば,被告は,飲み会について,参加方向への同調圧力を感じていた(参加を断りにくいと感じていた)可能性は否定できない。

 しかしながら,その程度を超えて,原告から従業員に対し飲み会への参加を心理的に強制するよう働きかけがされていたことを認めるに足りる証拠はない。ましてや,適当な理由をつけて配属先の現場(客先の会社)における仕事を差し置いてでも参加するよう心理的に強制するような働きかけがあったと認めるに足りる証拠はない。心理的強制の有無は,受け手の感受性(受け止め方)次第という面があることを考慮しても,前記程度の事情から直ちに心理的強制があった,あるいはそのように信じることが相当であったと認定するのは,飛躍があるといわざるを得ない。以上によれば,真実性,相当性があったとは認められないから,本件記載部分2に関する抗弁は理由がない。

3 問題となった本件記事1(本件記載部分3)

投稿ID:

投稿日時:

投稿内容:退職理由、退職検討理由

 正社員 20代前半(当時)男性 社員クラス プログラマ(オープン系・WEB系)

【気になること・改善したほうがいい点】

 退職理由は様々ですが、一般的に考えられる会社の〝普通〟からは逸脱しているように感じました。朝家を出た時、会社に到着した時、家に着いたときに社長に出発報告や帰宅報告やらを送ります。定期的に飲み会が開催されますが、多いときは週に2、3回やります。さすがに飲み代は会社持ちですが、強制参加で、現場配属になっていたら、どんな状況であっても18時に退勤して向かわなければなりません。

 現場によってはやはり残業というのは付き物ですので、何かと理由をつけて飲み会に向かいますが、週に何度もやられると現場に居にくくなります。

 いわゆるワンマン社長ですので、こちらの意見には当然耳を傾けません。また、帰宅中の電話や夜中の電話は当たり前。出るまで着信とメールが止みません。私は他の会社もこんなんではないかと会社を辞めたあともしばらく転職ができませんでした。

IPアドレス:

⑴ 社会的評価の低下

本件下線部(記載部分3)は,それ自体としては,意見ないし論評の表明であり,内容的に人身攻撃に及ぶものであるとはいえないが,本件記載部分1及び同2を前提とした評価であるから,これらと一体的に評価されるべきものである。

⑵ 公共の利害に関するもの

 一私企業の内情に関する事実摘示であるから,その内容自体に直ちに公共性が認められるわけではない。もっとも,それが,転職情報サイトを閲覧する不特定多数の者らの転職に当たっての評価・判断の資料となることを考慮すれば,同サイトに情報を記載することには社会的な意義があるといえるから,同サイトに記載された上記摘示事実には公共性があるといえる。

⑶ 公益目的

 本件各記事は,転職情報サイトの求める項目について,実際に原告において稼動していた際の情報を提供したものであり,その記載内容に人身攻撃にわたる部分がないことも考慮すれば,専ら公益を図ることにあったと認められる。

⑷ 適示された事実が真実でないこと・真実と信じるにつき相当な理由がないこと

 ・・(略)・・本件記載部分1のうち,「帰宅中の電話や夜中の電話は当たり前。出るまで着信とメールが止みません。」との記載部分及び本件記載部分2(「現場に居にくくなります。」との記載部分を含む全体)は,原告の名誉を毀損するものであり,本件記載部分3もそれ自体としては原告に対する人身攻撃にわたるものではないが,上記記載と一体のものとして,原告の名誉を毀損するものであるといえる。

4 問題となった本件記事2

投稿ID:

投稿日時:

投稿内容:

 正社員 20代前半(当時)男性 社員クラス プログラマ(オープン系・WEB系)

  

【気になること・改善したほうがいい点】

 客先常駐での案件がほぼ全てなので、社内開発はありません。今後社内開発も検討していくとらしいですが、プログラミングをするなら今の主流はリナックスかマックですが、、Windowsしか社内に置いていませんので、何を開発するのか気になります。

なぞの機能していない事業部も存在し、ただただパンフレットの見栄えを良くするために作っているだけのようなので、成長性などはあまり感じられません。

IPアドレス:

⑴ 社会的評価の低下

「なぞの機能していない事業部」という記載部分は,かなり抽象的・規範的であり,具体的事実の有無につき証拠をもって確定するのが困難であるから,被告にとってはそのように感じられたという意見ないし論評の範疇に属するものと解する。

 また,「ただただパンフレットの見栄えを良くする為に作っているだけ(のよう)」との記載部分についても,原告がそのような企てのもと当該事業部を作ったなどという事実を摘示しているわけではなく,被告においてそう考えたくなるほどに,当該事業部が「なぞ」であり,「機能していない」と感じたとの形容に過ぎない(「正社員 20代前半(当時)男性 社員クラスプログラマー(オープン系・WEB系)」,すなわち,当該事業部とは別の事業部に属する若手社員が,自ら「なぞ」とする当該事業部の創設目的・経緯を,具体的な事実として論じているなどとは読まないのが通常である。)。上記と併せて,意見ないし論評をいうものであると解する。

 そして,「成長性などはあまり感じられません。」との部分は,まさに,意見ないし論評に属する。

 これらの意見ないし論評はいずれも人身攻撃に該当するとはいえないから,本件記事2について,名誉毀損に当たるとはいえない。

⑵ 公共の利害に関するものでないこと

(⑴で要件不充足ですので、あてはめはありません)

⑶ 公益目的ではないこと

(⑴で要件不充足ですので、あてはめはありません)

 

⑷ 適示された事実が真実でないこと・真実と信じるにつき相当な理由がないこと

(⑴で要件不充足ですので、あてはめはありません)

5 問題となった本件記事3

投稿ID:

投稿日時:

投稿内容:退職理由、退職検討理由

 正社員 20代前半(当時)男性 社員クラス プログラマ(オープン系・WEB系)

  【気になること・改善したほうがいい点】

  教育体制は整っていません。客先常駐での仕事しかありませんので、先輩社員は社内にいませんし、社長が教えてくれるわけでもありません。自分で本などの教材を利用して社内で勉強しますが、初めてプログラミングを学ぶ人からしたら、まず何の言語をやればいいのかもわからないと思います。JavaやCあたりをやれっと指示されますが、初心者には厳しいですね。今時VBAは使わないのにそれの学習を進められたり、、、社長はあまりプログラミングについて理解がないので、ここでスキルアップしようと思っているのならやめたほうが懸命でしょう。

IPアドレス:

⑴ 社会的評価の低下

原告社内に教育してくれるような先輩社員はいないという事実を摘示し,これを前提に,原告においては新入社員に対する教育体制が整っておらず,スキルアップが望めるような企業ではないとの評価を加えたものと読める。

新入社員への教育体制が充実しているか否かが企業にとって重要な事項であることに鑑みれば,本件記事3は、原告の社会的評価を低下させるものといえる。

⑵ 公共の利害に関するもの

 一私企業の内情に関する事実摘示であるから,その内容自体に直ちに公共性が認められるわけではない。もっとも,それが,転職情報サイトを閲覧する不特定多数の者らの転職に当たっての評価・判断の資料となることを考慮すれば,同サイトに情報を記載することには社会的な意義があるといえるから,同サイトに記載された上記摘示事実には公共性があるといえる。

⑶ 公益目的

 本件各記事は,転職情報サイトの求める項目について,実際に原告において稼動していた際の情報を提供したものであり,その記載内容に人身攻撃にわたる部分がないことも考慮すれば,専ら公益を図ることにあったと認められる。

⑷ 適示された事実が真実でないこと・真実と信じるにつき相当な理由がないこと

・・・(略)・・・〔1〕客先企業での勤務についての打ち合わせや業務説明は行われており,そのような打合せ等が可能な先輩社員が存在していたこと,〔2〕原告従業員(P3)は,2か月に及ぶ新人研修等の研修教育や従業員同士の勉強会が行われている旨陳述するところ(甲7),被告の立証は,主に入社後10日程度の期間の状況についてなされるにとどまっており,その後の状況は証拠上明らかではないことを考慮すれば,摘示事実が真実であったと認めるには足りず,また,真実であると信ずるにつき相当な理由があったとも認めるに足りない。

【結論】

裁判所は、原告の請求を、上記の範囲で認めたため、被告は、一定額について、損害賠償責任を負うことになった。

【コメント】

上記の被告は、元従業員でした。元従業員が、過去の勤務先について誹謗中傷した場合、上記の基準を充足すると、損害賠償責任を負います。使用者が勝訴した事例として紹介します。解説の詳細は、YouTubeをご参照下さい。

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