削除請求の事例の紹介

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削除請求の事例の紹介

投稿の削除―裁判所による削除命令


***削除請求が認められた事例①***


ネット掲示板に、①「まるでヤクザの儀式」「良い年してヤクザアピール」「反社会的勢力に所属していた」、②「インテリジェンスと組んで詐欺的行為をしている」「闇金グループや振り込め詐欺グループなどがよく使う肩書き」、③「クレジットカード作らせてまで契約させる」「消費者にクレジットカードを作らせて高額の決済させる」と書き込まれた!

【判断】

社会的評価を低下させるものであり、名誉毀損、人格権侵害にあたるものとして、削除請求が認められました。

東京地判平成27年1月15日は、

「(書き込みの内容)は,その前の記載とあわせてみれば,原告がやくざまがいの集団であり,原告が詐欺を働いているかのように読め,不必要なクレジットカードの発行をさせて高額な契約をさせている会社であるとの事実が摘示されているということができ,これらにより原告の社会的評価を低下させる事実が摘示された」ものであるから、「原告の名誉を毀損し,人格権を侵害するものである」として、各書き込み単体ではなく、ウェブページ全体の削除請求を認めました。

(東京地判平成27年1月15日(平成26年(ワ)第23771号)) >>詳細はこちら。


***削除請求が認められた事例②***


「悪徳病院告発スレッド!」という題のスレッドの下、「過剰診療、誤診、詐欺、知ったかぶり」「ヤブ医者」「えげつない病院」と書き込まれた!

【判断】

社会的評価を低下させるものであり、名誉毀損にあたるものとして、各書き込みの削除請求が認められました。

東京地判平成14年6月26日は、

「(各書き込みは)侮辱的な表現を用いて誹謗中傷する内容であり,原告らの社会的評価を低下させるものであることは明らかである」から、「原告らの名誉を毀損するものというべきである」としたうえで、

「原告らは,それぞれ,人格権としての名誉権に基づき,被告に対し,本件各名誉毀損発言の削除を求めることができるものというべきである」として、各書き込みの削除請求を認めました。

(東京地判平成14年6月26日(東京地判平成13年(ワ)第15125号))


***検索結果の全内容の削除命令***


「ヤフー」検索結果につきアドレスも含めた全内容の削除が命じられました

自分の名前を検索すると暴力行為を連想させる集団との関係が表示されるとして、「ヤフー」に検索結果の削除を求めて仮処分が申し立てられた事件において、東京地裁は、平成27年12月、男性が今も集団に所属しているとの印象を与えるとして、申立てのあった47件のうち11件につき、削除を命じました。

これに対し、ヤフーは、削除は不要であるとの異議申立てをし、仮に削除が必要だとしても、リンク先のページの要約部分や、問題になる言葉だけを表示しないようにすれば十分であり、ページのタイトルやアドレスを削除する必要はないと主張しました。

この異議申立てについて、東京地裁は、平成28年8月、文章と同時に表示されるタイトルをクリックしたりアドレスを入力したりすれば、「利用者が男性の人格権を侵害する記事に容易にアクセスできる」として、要約などの削除だけではなく、タイトルとアドレスも含む検索結果の全内容の削除を命じました。

(東京地決平成28年8月17日)

【追記】

上記保全異議事件における東京地裁の決定については、東京高裁でも争われ、同決定を支持する判断が下されていました。この東京高裁の判断に対し、申立人の男性が特別抗告をしていましたが、平成29年7月、最高裁は、男性の特別抗告を棄却しました。これにより、63件の検索結果については、削除不要とするという東京高裁の判断が確定しました。

(最決平成29年7月19日)

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***削除命令の一部取消***


「グーグル」検索結果の削除命令が一部取り消されました

平成26年6月、自分の名前を検索すると、犯罪行為を連想させる記事や、暴力行為を連想させる集団との関係があったとする記事が表示されるとして、「グーグル」の検索結果約230件を削除する仮処分命令が申し立てられました。この申立てについて、東京地裁は平成26年10月、検索結果が申立人の男性について「素行が不適切な人物との印象を与える」などとして、申立てのあった約230件の検索結果のうち、122件の削除を命じました。

これに対し、グーグルは、削除が命じられた122件のうち66件について、男性が約10年前の雑誌インタビューによってプライバシーを放棄していたなどとして、平成27年12月、削除を命じる仮処分決定の取り消しを求める保全異議を申し立てました。

この保全異議事件において、東京地裁は、平成28年7月、過去に自ら公表したものだとしても「プライバシーを終生放棄したと考える必要はなく、時間経過などを考慮して判断すべき」であるとしつつ、本件では「男性の経歴や属性が一定程度周知され、この経歴を男性が現在も利用して」おり、集団の「過去の構成員を明らかにすることは現在も一定の社会的意義があ」るとして、約60件の検索結果につき、削除を命ずる仮処分決定を取り消しました。

(東京地決平成28年7月14日)


***検索結果の削除を認めなかった事例***


「グーグル」検索結果につき逮捕歴の削除請求が認められませんでした

自分の名前や居住する県の名称を入力して検索すると、児童買春の逮捕歴に関する報道内容が記載されたウェブサイトの表題や抜粋が提供されるとして、「グーグル」に検索結果の削除を求めて仮処分が申し立てられた事件において、最高裁は、平成29年1月31日、申立てを却下した原審の判断を認め、削除を認めない決定をしました。

最高裁は、ある者のプライバシーに属する事実を含む記事等の削除につき、「当該事実(注:ある者のプライバシーに属する事実)を公表されない法的利益と当該URL等情報(注:ある者のプライバシーに属する事実を含む記載等が掲載されたウェブサイトのURL、表題、及び抜粋)を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量」して「当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができる」との判断基準を初めて示しました。判断の際考慮すべき要素として、情報の内容、プライバシー侵害の被害の程度、社会的地位への影響、記事の目的などをあげています。

そして、本件について、児童買春が社会的に強い非難の対象とされており、今なお公共の利害に関する事項といえること、及び削除が申し立てられている検索結果は、申立人の居住する県名と申立人の氏名を検索の条件とした場合の検索結果の一部でしかなく、事実が伝達される範囲がある程度狭いといえることから、現在申立人が妻子と共に生活し、その後罪を犯していないことを考慮しても、逮捕の事実を公表されない法的利益が優越することが明らかとは言えないと判断しました。

(最判平成29年1月31日)

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