爆サイの事例の紹介

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爆サイの事例の紹介




事例(1)
「サビ残」「かなりブラック」と書き込まれた!

東京地判令和2年12月24日(令和1年(ワ)第21424号)

本件においては、インターネット上の電子掲示板である爆サイ.Comの〇〇版に投稿された匿名の投稿によって、原告(会社)の名誉権が侵害され、原告(会社)の発信者情報開示請求が認められるかが争点となりました。
【問題となった表現】本件投稿(概要):原告の従業員が「サビ残」をしており「かなりブラック」と指摘した。

【裁判所の判断】

まず、本判決は、本件投稿の同定可能性を認め、本件投稿につき、以下のとおり、原告(会社)の社会的評価を低下させるものであると判断しました。

 (本件投稿について)

「本件投稿は,原告の従業員が「サビ残」をしており「かなりブラック」と指摘しており,一般の閲覧者の普通の注意と読み方を基準にすると,原告ではサービス残業(本来支払われるべき残業代が支払われない時間外労働(残業)のこと)が横行しており「ブラック」企業(労働基準法を遵守せず違法な労務管理を行っている会社)であるという印象を与えるものといえ,原告の社会的評価を低下させ名誉権を侵害するものである。

そのうえで、本件投稿を行ったIPアドレスにかかる契約者からの回答書に記載された、「本件投稿の内容は、少なくとも投稿者の友人の経験を踏まえた評価として真実である」旨の主張について、真実性及び真実相当性を認めず、原告(会社)の発信者情報開示請求を認めました。




事例(2)
「××の社長って虚言癖で有名だよね」「■■協会□□部長の会社が健康診断未実施だとよ」と書き込まれた!

東京地判令和4年3月25日(令和3年(ワ)第24858号)

本件においては、インターネット上の電子掲示板である爆サイ.Comの△△版に投稿された以下の匿名の各記事によって、原告(運送会社)の名誉権が侵害され、原告(運送会社)の発信者情報開示請求が認められるかが争点となりました。

【問題となった表現】(一部記載を変更しております)
本件記事1-1:
「××の社長って虚言癖で有名だよね」

本件記事1-2:
「≫〇〇
お勧めはできません、アホを通り越してます、ドMまたはハラスメントを受けても平気な方、割り切って文句も言わず仕事ができる方(イエスマン)自分の意見を言わない方なら多少は持ちます、まともな良心をお持ちの方はだいたい自分自身との葛藤になるでしょうね、モラルが崩壊してるんで効率や合理性などは一切無視の会社ですよ」

本件記事1-3:
「××ってまだあったんだね、それだけ世の中がまともに機能していない証拠ですね、何でもありってことですね」

本件記事1-4:
「■■協会□□部長のところですよね?そこに労基や陸運?大問題ですね、まぁ世の中がその程度って事ですね」

本件記事1-5:
「■■協会□□部長の会社が健康診断未実施だとよ」

本件記事2-1:
「×〇運輸といえばモラハラ」

本件記事2-2:
「××の社長は精神病なのかな、病人は自覚症状がないことがあるらしいからね、自覚あれば悪質だし、どっちにしろアウト」

本件記事3-1:
(スレッドの表題が「入社してはいけない運送会社は?」であることに対し)
「××運輸」

本件記事3-2:
「経営者がイカレポンチ精神異常者で犯罪者夫婦の▲▲の××運輸」

本件記事4-1:
(スレッドの表題が「◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇」(「クソ会社」という不穏当な表現や不穏当な絵文字を含む表題)であることに対し)
「×〇運輸」

【裁判所の判断】
本判決は上記の各記事について同定可能性を認め、本件記事1-1、1-2、1-5、2-2及び3-2について、以下のとおり、原告(運送会社)の社会的評価を低下させるものであると判断しました(同定可能性が否定された記事は割愛しています)。

 (本件記事1-1について)

「一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方を基準にすると,本件記事1-1は,原告代表者が虚言癖のあることで有名である旨の事実を摘示しているものと認められ,一般の閲覧者には,原告につき,虚言癖のある代表者がいるような信用性の低い会社であるという印象を与えるから,原告の社会的評価を低下させるものということができる。これに対し,被告は,〔1〕転職検討者は原告の様々な情報を収集して検討するから,原告への否定的な評価の記載があったとしても,原告の営業権の侵害には直結しない,〔2〕インターネット上の掲示板には出所不明の戯言,推測,噂が出回っていることは顕著な事実であり,具体的な根拠を述べない投稿を読んだ通常の閲覧者が原告の名誉権や営業権の侵害を認めるような評価を抱くとは考えられない,〔3〕原告との取引や就職をためらわせた根拠はないし,収益減が生じたことの立証もないと主張する。しかし,〔1〕個人による否定的な評価にとどまらず,違法行為や社会通念上不相当とされる行為を摘示するものについては原告に就職しない方向の検討材料として利用されるから,原告の名誉権又は営業権の侵害となり得ること,〔2〕インターネット上の電子掲示板への投稿が具体的な根拠を述べないものであるからといって,一般の閲覧者が直ちに信用性を有しないと評価するとは限らないこと,〔3〕社会的評価が低下したと認めるに当たっては,取引や就職の減少又は収益減といった実損害が発生する必要まではないことに照らせば,被告の主張はいずれも採用することができない(なお,本件記事1-1以外の本件各記事についても同様である。)。」

 (本件記事1-2について)

「一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方を基準にすると,本件記事1-2は,少なくとも,原告が従業員との関係では効率性や合理性を一切無視する社風の会社である旨の事実を摘示しているものと認められ,一般の閲覧者には,原告につき,従業員の職場環境が悪い会社であるという印象を与えるから,原告の社会的評価を低下させるものということができる。」

(本件記事1-3について)

「一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方を基準にすると,本件記事1-3は,原告に関する具体的な事実が記載されていないから,証拠等をもってその存否を決することが可能な特定の事項を主張するものとはいえず,前提となる事実を摘示することなく,意見ないし論評を表明したものであると認められる。そして,本件記事1-3は,原告がまだ存在するのは世の中がまともに機能していないためである旨の投稿者個人の価値観に基づく否定的な評価が記載されているにとどまるから,これによって原告の社会的評価が低下したとまでは認めることができない。また,原告の営業権が侵害されたとも認められない。」

(本件1-4について)

「一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方を基準にすると,本件記事1-4は,その直前に投稿された,本件スレッド1の△□△番及び△◆△番の記事で,原告が労働基準監督署(又は地方運輸局(かつての陸運局))の指導により厳密な就業規則を定めようとしている旨が記載されたこと(甲20の3)につき,大きな問題がある,世の中がその程度であるとの評価を記載したものにすぎないから,証拠等をもってその存否を決することが可能な特定の事項を主張するものとはいえず,前提となる事実を摘示することなく,意見ないし論評を表明したものであると認められる。そして,本件記事1-4は,原告に対してだけではなく世間一般に対しての投稿者個人の意見が記載されているにとどまるから,これによって原告の社会的評価が低下したとまでは認めることができない。また,原告の営業権が侵害されたとも認められない。」

(本件記事1-5について)

「一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方を基準にすると,本件記事1-5は,原告が従業員の健康診断を実施していない旨の事実を摘示しているものと認められ,一般の閲覧者には,原告が労働関係の法令を遵守しない会社であるという印象を与えるから,原告の社会的評価を低下させるものということができる。」

(本件記事2-1について)

「一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方を基準にすると,本件記事2-1は,原告からはモラハラが想像される旨が記載されたものと認められる。 そして,本件記事2-1は,原告に関する具体的な事実が記載されていないから,証拠等をもってその存否を決することが可能な特定の事項を主張するものとはいえず,前提となる事実を摘示することなく,意見ないし論評を表明したものであると認められるところ,「モラハラ」とされる行為には様々な行為があり,悪質性の高いものから低いものまでみられる。そのため,「原告といえばモラハラ」というだけではその内容があまりに抽象的であり,投稿者個人の価値観に基づく否定的な評価が記載されているにとどまるから,これによって原告の社会的評価が低下したとまでは認めることができない。また,原告の営業権が侵害されたとも認められない。」

(本件記事2-2について)

「一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方を基準にすると,本件記事2-2は,原告代表者が精神的な疾患により又は自覚しながらモラハラ行為をしていることが疑われる旨の事実を摘示しているものと認められる。そして,モラハラ行為の評価については前記アのとおりであるとしても,原告代表者に精神的な疾患が疑われる旨の記載がある以上,一般の閲覧者には,原告につき,問題のある代表者がいる信用できない会社であるという印象を与えるから,原告の社会的評価を低下させるものということができる。」

(本件記事3-1について)

「本件スレッド3の表題が「入社してはいけない運送会社は?」である以上,表題に反する内容の記載が加えられていない限り,本件スレッド3内の記事に記載された事業者は入社すべきではない事業者として記載されていると解するのが自然であるから,一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方を基準にすると,「××運輸」との記載しかない本件記事3-1は,原告が入社すべきではない事業者である旨が記載されたものと認められる。そして,本件記事3-1は,原告に関する具体的な事実が記載されていないから,証拠等をもってその存否を決することが可能な特定の事項を主張するものとはいえず,前提となる事実を摘示することなく,意見ないし論評を表明したものであると認められるところ,入社すべきではない理由が明らかではなく,投稿者個人の価値観に基づく否定的な評価が記載されているにとどまるから,これによって原告の社会的評価が低下したとまでは認めることができない。また,原告の営業権が侵害されたとも認められない。」

(本件記事3-2について)

「一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方を基準にすると,本件記事3-2は,原告代表者の夫婦が精神的に異常であるといえ,犯罪者でもある旨の事実を摘示しているものと認められ,一般の閲覧者には,原告につき,原告代表者の夫婦が精神的な疾患を有しているか,犯罪行為を行っているような悪質な会社であるという印象を与えるから,原告の社会的評価を低下させるものということができる。」

(本件記事4-1について)

「本件スレッド4の表題が「◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇」である以上,表題に反する内容の記載が加えられていない限り,本件スレッド4内の記事に記載された事業者は「クソ会社」として記載されていると解するのが自然であるから,一般の閲覧者の普通の注意と閲覧の仕方を基準にすると,「×○運輸」との記載しかない本件記事4-1は,原告が「クソ会社」である旨が記載されたものと認められる。 そして,本件記事4-1は,原告に関する具体的な事実が記載されていないから,証拠等をもってその存否を決することが可能な特定の事項を主張するものとはいえず,前提となる事実を摘示することなく,意見ないし論評を表明したものであると認められるところ,「クソ会社」(悪質な会社を意味すると考えられる。)という不穏当な表現や不穏当な絵文字を含む表題の本件スレッド4に投稿された記事であるとはいえ,原告と同定できる会社名を記載しただけではその内容があまりに抽象的であり,投稿者個人の価値観に基づく否定的な評価が記載されているにとどまるから,これによって原告の社会的評価が低下したとまでは認めることができない。また,原告の営業権が侵害されたとも認められない。」

そのうえで、原告(運送会社)の社会的評価を低下させることが認められた本件記事1-1、1-2、1-5、2-2及び3-2について、違法性阻却事由があるとは認められないとし、原告(運送会社)の発信者情報開示請求を認めました。

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